【1】農業・夫婦(福岡県) 夫85歳/妻82歳

【1】農業・夫婦(福岡県) 夫85歳/妻82歳

満州は寒かったとですが、宮古島は年じゅう夏。気候だけは良かったとです。ただ場所が悪かった。沖縄本島を爆撃した米軍機の帰り道にあったとです。米軍機 は爆弾をカラにして帰らないかんけん、帰る途中で余った爆弾を宮古島で落としよったとです。ですから宮古島では隠れるための壕掘りばっかししよった。それ が毎日毎日続く。日本の軍艦は撃沈ばされちょって、輸送力もない。
いつも朝になると、沖縄本島で爆弾を落とした米軍機が宮古島を通るとですたい。すると空襲警報が鳴り「はよう壕に入れ!」て言われて穴ん中に入りよったとです。これも毎日んごたった。機銃掃射もあって、恐ろしかったとですよ。
こういうこともありました。
私は機関銃隊じゃった。ある日、米軍のグラマン機から見えんように隠れて、低空飛行で来たときに重機関銃でバラ!バラ!バラ!と撃った。すると敵機が落ちた。「オレが機関銃を撃ったとで落ちたとぞ!」と思わず叫んだとです。
一人のアメリカ兵が降参して手を上げて歩いて来た。飛行機そのものの残骸はなかったとです。飛行機が落ちる前に、自分からパラシュートで飛び降りたんじゃろうと思う。
日本兵は若いっちゃけ「えーい、叩き殺せ!」「切って!切って!切らにゃ!」と叫ぶモンもいたが、小隊長や中隊長がおりまっしょ。それなりにちゃんと捕まえて、殺したりはせんじゃったとです。日本兵は紳士的なこともちゃんとしよったとです。
それにしても、宮古島にはマラリアを持つ蚊がウヨウヨしよるとです。マラリアにかかった人が、目の前で「うーうー」と呻(うめ)きながら死によったとで す。高熱を出して…。かわいそうじゃった。かなりの人が亡くなったでしょうな。火葬して、家族には「マラリア病で亡くなった」とは言われんけん「戦死」と 知らせちゃりよった。「名誉の戦死」となりますけんね。
私ん場合は、農業しよったからかも知れんが、マラリアの「マ」の字もなかったですたい。それでん蚊が毒を持っているということで、恐ろしかったとです。こ の辺でブーンと飛んでくる小さな蚊ではなく、フトかったとです。蚊帳(かや)は吊っちょったんですが、どっからか入りよったとでしょうね。蚊帳に入っ ちょっても、トイレなんかで出入りしましょうが。そん時に入るとでしょうな。

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